成長戦略に掲げた「女性の活躍」は少子化対策の鍵にも

週刊ダイヤモンド』(2013年7月6日号「数字は語る」)

数字:1.41
解説:2012年の合計特殊出生率
(1人の女性が一生に産む子どもの平均数)

 6月5日に厚生労働省が発表した2012年の合計特殊出生率(以下「出生率」)は、昨年を0.02ポイント上回る1.41で、16年ぶりに1.4台を回復した。過去最低を記録した2005年の1.26からは、0.15ポイントの上昇となる。人口構成比の高い団塊ジュニア世代を中心とした、30代の出産が増えているのが主たる要因だ。

 この1.41という出生率は、諸外国と比べて著しく低い水準というわけではない。たとえば、ドイツとスペインは1.36、韓国は1.24、香港とシンガポールは1.20(いずれも2011年のデータ)で、日本の数字を下回る。深刻な少子化は、今や多くの先進国が抱える共通の問題なのである。

 人口を一定に保つためには、最低でも2.07程度の出生率が必要とされる。この水準から0.7ポイント近くも低い現状の数字では、近い将来の急速な人口減少は避けられない。少子化に伴う総人口の減少は、国内市場やGDPの縮小をもたらす。また、労働力人口の減少は、年金や医療などの社会保障制度の維持をますます困難にする。出生率が改善傾向にあるとは言え、楽観できる状況からはほど遠いのである。

 では、どうすれば少子化問題を克服することができるのだろうか。かつては(今でも?)、「女性の社会進出こそが少子化の原因」であるかのような言説がまかり通っていた。しかし現状では、日本を含む多くの先進国において、(有業率などで見た)女性の社会進出と出生率に正の相関が見られるようになっている。つまり、女性の社会進出が進んでいる地域や時期の方が、出生率も高い傾向にあるのだ。

 もちろん、こうした単純な相関関係だけからでは、女性の社会進出が出生率の増加をもたらす、という因果関係まで導くことはできない。しかし、出生率の増加を政策的に達成したフランスやスウェーデンなどの経験を踏まえると、女性がキャリアを犠牲にせずに、子どもを産みやすい労働環境を整備することが、少子化対策にもつながる公算が高い。安倍晋三首相が成長戦略の中核に掲げた「女性の活躍」が、実は少子化対策の鍵も握っている


【関連文献】

女性が活躍する会社 (日経文庫)
大久保 幸夫
日本経済新聞出版社
2014-10-16